コロナショックで世界の株価は大きく下落しました。
リーマンショックや東日本大震災を超える急速な下落。
当然ながら、この時に大損をしたり、大幅な含み損となった人は少なくありません。
しかしこれだけ相場が動いたと言うことは、実は大きな儲けを出した人もいるに違いありません。
屑オプションにまつわる複雑な相場事情をまとめました。
オプションって何?
板表示はほとんど株と同じ
この板表示は特に安い(10円台の)225オプションの板表示です。
値段が安いので、屑オプションなどと呼ばれることもあります。
オプションにはコールとプットがありますが、どちらでもこのような板表示です。
一見すると株とほとんど変わりません。
違うのは株の場合、100株単位の銘柄がほとんどですが、オプションの場合は1枚単位になっている点。
3円から850円まで跳ね上がった屑プット
ショック相場の裏では、とんでもない「金融の乱」が起きています。
コロナショックの相場において、20/03 P20000のオプション価格は3円から850円まで跳ね上がりました。
20/03 P20000はオプションの種類です。
種類とは?
20/03 P20000の意味は?
20/03 P20000は、株で言えば銘柄名に相当します。
20/03は、2003と表記する場合もあります。
- 20は2020年の下2桁
- 03は3月限
- Pはプット
- 20000は日経先物の価格
を意味します。
このプットオプションが3円から850円まで急騰。
下で1万円分買っておけば、それが数百万円に。
もちろんたくさん買っておけばとんでもない大儲け。
3月限とは
期限が3月であると言う意味。
3月限と書いて「さんがつぎり」と読みます。
先物オプションには期限(期日)があります。
そこが株と違う点です。
期日と言うのは、その日で消えてなくなるということ。
もちろん利益が残る場合もあれば、損失が出る場合もあります。
プットとコールの値動き
イメージ的に言うと、
- 日経平均が上がるとコールが値上がり、プットが値下がり
- 日経平均が下がるとプットが値上がり、コールが値下がり
します。
20000はどういう意味?
Pの部分は、コールの場合、Cと表記されます。
英語では
- プット:Put
- コール:Call
と言うことです。
20/03Pのオプションには、それ以外にも様々な先物価格の「銘柄」が存在します。
例をあげれば
- 20/03 P21000
- 20/03 P22000
等です。
イメージ的に言えば、どの「銘柄名」であっても同じプットであれば、おおむね似たような値動きになります。
コール同士についてもそれは言えます。
オプションのとんでもリスク
買いで資産100倍の裏に
冒頭で述べたとんでもない急騰があるたびに、一夜にして資産を大きく増やす人もいれば、その逆もあり得ます。
3円で空売りをかけて850円まで持っていかれたらどうなるのでしょうか。
追証の恐さは、仮に850円まで急騰してから3円まで値段が戻ったとしても逃れられない事です。
担保割れを起こした時点で、その分のおカネを差し入れなければなりません。
オプションの板の薄さと値動きの大きさ
オプションは、株で言えば小型株や低位株のような板構成になっていることが少なくありません。
ものによっては板が飛び飛びの状態も良くあります。
その状況で、あまりにたくさんポジションを抱えていたらどうなるでしょうか。
空売りの場合、すぐ買い戻せないリスクもあります。
板に出ていないものは買い戻せないためです。
自分の買戻しで値が上がってしまう場合も。
これが売りのリスクです。
空売りのリスクはオプションに限らない
実は空売りのリスクは、株・為替・オプションその他でも共通していて、損失が無限大となる場合がないとは言えません。
株ならストップ高を連発されたらアウト。
為替ならインフレになったら…。
オプションの場合には、値動きが非常に大きくなるケースが度々あるので、より一層注意が必要になると言うだけです。
なぜオプション売りをやる人がいるのか
オプションの価値は時間とともに減衰する
オプションには期限があり、その時までに1円張付きの状態になる場合が少なくありません。
オプションは時間とともに価値が減少するためです。
どうせ値下がりするのですから、空売りをすれば簡単に儲かると考えるのは理解できる事です。
とんでもなく担がれ追証となるリスクの裏に、オプション売りの危険な誘惑が存在します。
また、十分な資金の裏付けがあれば、ヘッジとしての使い勝手は良いのです。
先物と組み合わせて様々なヘッジの手法が取れる
オプションには様々な種類があり、先物との組み合わせを含めた幅広いヘッジが可能です。
例えば、ざっと組合せを考えただけでも
- 先物買い+コール売り
- 先物買い+プット買い
- 先物売り+コール買い
- 先物売り+プット売り
- コール買い+プット買い
- コール買い+プット売り
- コール売り+プット買い
- コール売り+プット売り
取引の幅、組み合わせの可能性はとても広いです。
これだけ売ってるオレって凄いだろ
「すぐ下がるのだから売れるだけ売ってやれ。」
オプションではこれが最も危険な手法。
ですが、そういったリスクを恐れない態度を自慢したい人もいるでしょう。
度胸を女性に見せたくてロシアン・ルーレットをやり、一発目で弾が出て天国行きになった人もいます。
度胸自慢はなかなかつらい。
もっとも、度胸自慢ではなく、本場の有能なトレーダーがオプションで破産することもあります。
プット売り失敗の実際例
過去には腕利きの名トレーダーと言われた人が、プット売りで一発退場となった例があります。
ヴィクター・ニーダー・ホッファーは米国で一世を風靡した人で、米国の金融業界で知らない人はいないと言うくらい有名な人でした。
かのBNFと言う名前は、彼にあやかってつけたのだとか。
(ヴィクターならVNFですが。)
ヴィクターニーダーホッファーとは
元大学教授(財政学)にして投機家。
スカッシュの元学生チャンピオン。
ヘッジファンドマネージャー。
彼の名前で検索すると、輝かしい経歴がすぐさま出てきます。
暴落で追い詰められた末に【1997年10月27日】
当時、 NHKスペシャルと言う番組で、1日で50億円を失った男として紹介された男。
それがヴィクター・ニーダー・ホッファーです。
この動画では、
- ヴィクターとテニスをする若き日のジョージ・ソロス
- 破産したヴィクターと対照的に大儲けをした弟のロイ
- 主人ヴィクターの破産を気にもとめず大邸宅で眠る大型犬
- ヴィクターの大枚のプット売りを証言する顧客
- 同級生のノーベル経済学賞受賞者マイロン・ショールズ
などが紹介されていました。
その他オプションの注意点をざっと
株価に相当するオプションの価格はプレミアムと呼ばれ、単位は円です。
オプションの値動きは、イコール、プレミアムの値動きです。
プレミアムが1円~30円くらいの安いものは一般に、屑コール、屑プットと呼ばれます。
オプションのタイム・ディケイ
オプションの買いによって、裸で(ヘッジではなく)デイトレ・スイングをするのは難しいです。
時間とともに徐々にプレミアムが下がることをタイム・ディケイと呼びます。
ディケイとは腐ると言う意味の英語。
タイム・ディケイのために値下がりするため、買いは難しく、空売りがやり易く感じられます。
しかし上述したように、それを補って余りあるリスクが存在しています。
オプションのリスクを一言でまとめると
オプションでは、買い専門でやっている分には、損失は買った金額の範囲内になります。
しかし、タイムディケイによりオプションが1円張付きになって、オプションの最終日に消えてなくなる(つまり0円になる)ことが多いです。
これに対し空売りの場合には、上述のようにとんでもなく担がれる場合がないとは言えません。
オプションを買ったら建て代金はどうなる
オプションは、1枚につきプレミアムに「×1000倍」した値段が、株で言うところの建玉代金になります。
つまり、3円のプットを1枚買ったら建て代金は3000円です。
これが仮に850円まで値上がりすると、建て代金は
850円×1000=85万円
となり、決済した場合は差額(85万円-3000円)が利益となります。
オプションの1枚は、株で言うところの1000株分のようなものです。
屑オプの1ティックの率がデカい
オプション価格(プレミアム)が安い屑コール、屑プットでは、低位株と同じく、上の板で買ってしまったらなかなか同値では降りられません。
特に深夜0時以降の屑オプションは板がスカスカで値が飛んでしまい、上の板が12円で下の板が8円なんてことも。
建て代金依存の手数料は軽視できない
オプションは結構手数料がかさみます。
なぜかと言うと、オプションの手数料は売買代金の何%と言う計算をする証券会社がほとんどだからです。
安いオプションを小額買っても、何度もやっているうちに建玉総額はすぐに膨れ上がります。
その数%が手数料となるため、やればやるほど比例して手数料が大きくなります。
実際の手数料計算
株でも、同じような手数料の計算方法を取っている証券会社はあります。
オプションの手数料の率は証券会社ごとに異なり、建玉総額の0.15%~0.22%の間の証券会社が多いようです。
建玉総額が1000万円の場合を考えると、手数料1.5万円と2.2万円の違いで7000円の差。
安い屑オプションで控え目に売買していも、このくらいの差は簡単についてしまいます。
もちろん、屑オプションは最も安い、株で言えば10円~20円の水準の銘柄に相当します。
そうではなく、もう少し高い(10倍あるいはそれ以上の水準の)オプションの取引をしたら、手数料はどうなるか。
なかなかシビアな問題です。
225オプションの口座開設で気を付けること
買う時と売る時の両方ともに手数料がかかる訳で、建玉の総額が1000万円分に達するのは割とすぐです。
25円のオプションを1枚買って売るのを200回やったら1000万円に達しますから。
225オプションの取引時間帯は早朝までと長いので、相場が急変した場合など急にポジションを解消したり、買い増したりと言うことがあります。
手数料問題はなかなか大事なファクターです。