ストップ高・比例配分狙いの方法をご存じでしょうか。
これが裏技だと気づいたのは2005年頃。
今やこの手法、大いに陳腐化しております。
下手に手を出すと、えらい目にあいます。
ハイリスクなだけの手法ではないか?
某日、この手法にはめ込まれて悶絶。
そんな男の体験談が以下であります。
ストップ高張り付け狙いの結果
PTSとは
私設市場取引システムのことです。
寄り付き前、大引け後でも取引が可能と言う、何とも便利なシステム。
このPTSでの取引は、取引所(東証など)ではなく、証券会社のシステムの中で売買することになります。
PTSでPTSD
顔面が真っ青の時、とりあえずPTSの株価を確認する、そんな人は多いでしょう。
買い持ちした株の動向が心配で仕方がない時。
株をやっている者としては一番避けたい瞬間です。
某日、その時がやってきました。
下手をするとPTSのおかげでPTSD、すなわち心的外傷後ストレス症候群になり兼ねない。
そんな相場の不条理であります。
S高張り付き買い
ある日、某株がストップ高張り付き。
そこで頭をもたげる、比例配分狙いの手法。
本当に久しぶりの気まぐれで、手を出しただけ。
誘惑に負けました。
このストップ高は、大量の買い注文を残したまま終えるだろう。
あわよくば1枚、100株だけでも買えないか?
大引け20秒前にストップ高が剥がれて急落、そんな銘柄は何度も見てきています。
万一剥がれたら、自分の買い発注が約定してしまい、無間奈落。
その対策は、
手順1:雪崩と同時に発注を取り消す
手順2:取り消しが間に合わなければ、すぐ離脱、つまり損切り
迅速に処理できるよう目を凝らし、張り付いたストップ高気配を監視していたのに。
大引け15時00分にそれは起こった
大引けジャスト15時00分。
S高に張り付いていたその株に、事もあろうか10億円分以上の売り。
目を疑いました。
大量のデカい売り。
比例配分狙いと言えども、ストップ高価格に十分厚い買い板が出ているのを確認しています。
これだけ買いが入っているのだから、大丈夫だと。
しかし、15時ちょうどだぞ、おい!
考えてみれば、引けであろうと、まとめて売りが出ないとは誰も保証できません。
15時の板状況
15時00分直後、目を疑い、何度も板状況を確認。
何度見ても10億円分以上の売りが出たことに間違いありません。
ジャスト00分にやるか?
板状況では、残された未約定の買い発注が少ししか残っていませんでした。
うまくできてんなあ。
狙いすましてやがる。
PTSの非常事態
15時00分直後、約定した買い建玉全てを慌ててPTSで売ろうとしました。
ところが、キーボードとマウスをカシャカシャやってみましたが、どうにも売れません。
損切りできないのです。
比例配分、どうせ当たりはしないだろう。
そんなふうに高を括っていたため、3つの証券会社から買い発注を出していたのです。
1つの証券会社は15時17分の時点で買い約定通知。
他の証券会社ではまだ比例配分の結果が出ていません。
とりあえず買えてしまった分だけでもPTSで損切りしよう。
しかし、どうやってもビクとも売り発注が出せません。
要注意:自動損切りが出た直後の引け
当方も用心はしていました。
大引け前20秒くらいでストップ高が剥がれることは、何度も見てきています。
ストップ高から剥がれて急落した時にそなえ、返済売りの予約を入れていました。
すなわち、自動損切装置です。
この返済売りの予約は、大引け直後の時点では解除されません。
このため、PTS市場で損切りすることができなかったのです。
これはシステム上の仕様です。
返済発注が出たまま大引けを迎えると、直後のPTS(15時~16時)ではその株を売ることができない。
これ、ご存じでしょうか。
PTS市場で損切りが出来ていれば、多少は救われたかも知れません。
15時30分になると、他の証券会社の買い発注も、全て約定してしまいました。
当たらないでくれと祈っていましたが。
10億円分も売りが出たらそれは無理です。
思い切り全株、買い約定。
PTSの非情な下げ
直後、PTSを見ていると、みるみるうちに株価が下がっていきました。
ええい、ままよ。
もうあきらめて、翌日まで持つことを決めました。
あれほど絶望に包まれた夜は、経験したことがありません。
翌寄り付きはストップ安
翌朝、寄り付き前の気配を見ると、あろうことかストップ安気配。
これを悪夢と呼ばずして、なんと呼ぶのでしょう。
ストップ高で引けに10億円分まとめて売り。
翌日寄り付きでストップ安気配。
やっこさん、タダものではありません。
寄り前に気配はじわじわ上げ、寄り付き2分前から急速に戻したものの。
寄り付き価格は10%程度のギャップダウン。
当方、そこで思い切りブン投げ。
スケベ心でノックアウトを食らう。
信用全力で買いを入れた人もいるかも知れません。
そんなことをしたら、この1回だけで退場必至です。
値動きは裏切る
その後、株価は一日をかけ、ゆっくりと戻しました。
戻すとわかっていれば、売る訳がありません。
しかし、わからない、だから困るのです。
株価は昨日終値を超えてどんどん上がり続けました。
寄り付き直後にナンピンした人は助かり、それどころか大儲けしたことになります。
しかし、当方、恐ろしくてそれはできませんでした。
これが相場のPTSD(心的外傷後ストレス障害)であります。
しかし、あの10億円以上の売り、誰が出したのでしょうか?
返済注文後の引けに注意
ザラバ中に信用買いの後、返済注文を出したまま大引けを迎える。
これは要注意です。
最近は自動で返済注文を出す人も少なくないので、このパターン、ありがちです。
15時30分までは現引が即時反映される筈だから、そうしよう。
そう思って、現引の上、PTSで売ろうとしても、全くお手上げ。
発注システムは、うんともすんとも言いません。
大引け後、一定時間内は返済注文の取消ができず、現引もできず、結局のところ、何も手が打てなくなるのです。
すなわち、大引け後、すぐにPTSで売ろうと思うなら、決して返済注文を出して引けてはなりません。
PTSには、他にも注意すべき諸事情がいろいろあります。
PTSで売れない信用玉
ザラバで信用買い。
その時点では、PTSで売ろうと考えていないことが多いでしょう。
夜、PTSを見てみたら、予想以上に上がっている。
PTSを使いたくなるのは、こんな時。
ところが、夜間のPTSでは、現物玉でないと売れません。
信用玉をPTSで売るためには、現引しなければなりません。
現引とは、品受けとも呼ばれ、現物株として引き取ることです。
たいていの場合、手数料はかからず、信用の玉を現物玉に代えることができます。
ここで登場するのが、現引可能な時間帯の問題。
現引できる時間帯
以下の現引時間帯は某証券の例ですが、どの証券会社も似たりよったりの状況です。
注文受付時間
3:00~15:30
17:00~2:00
約定反映時間
6:45~15:30
現引即時反映の注意
約定反映時間が限定されているのがキモです。
これにより、夜間、現引注文は出せるにしても、約定はしないと言うパターン。
信用玉を持ち、PTSで売ろうとした時に、この問題に直面することが多い。
すなわち、即時に現引したければ、当日の15時30分までに現引注文を出しておかなければなりません。
さもなければ、翌朝まで、信用玉を現物玉に変更することはできません。
しかし、15時~15時30分に、そんなことを一々思い出さないのが普通です。
これが現引時間帯の注意すべき事象であります。
板が薄い
そもそも、PTSにおいては、前場・後場中に比べ、板が薄い。
まったく板が出ていない銘柄もあります。
空白の板状況です。
そこに注文を出し、チマチマ約定させていくのがPTS。
証券会社によっては、PTSの売買手数料が無料。
当方、チマチマやる時は、PTS無料の証券会社を使うことが多いです。
しかし、これをやっていると、かなり時間が無駄。
ずっと何時間もPTSを見張ることになります。
相場の時間が長くなる
PTSをやろうとするだけで、相場に向かう時間は倍以上となります。
前場・後場のみで合計5時間、昼休みを入れて6時間、先物もあわせるとそれ以上。
PTSは証券会社にもよりますが、余裕でそれを遥かに超える時間、開いています。
結局のところ、前・後場と併せてPTSをやろうとしたら、朝から24時まで目が離せないなんてことに。
PTSのない時代は15時で上がれたのに、であります。
すなわち、利便性と引き替えに時間が奪われる。
現代の病理が、相場においても確認できるのであります。
証券会社が限られる
当方が知り得るかぎり、PTSで売買可能な証券会社は3社のみです。
それ以外の証券会社では、PTSが使えません。
PTS非対応の証券会社で買い持ちした際は、当然ながらPTSで売ることはできません。
PTSで売るかも知れない銘柄は、PTSに対応する証券会社で持ち越すようにしなければなりません。
すなわち、トレードの前に、PTSのことまで視野に入れておかねばなりません。
当方の場合、これがなかなかどうして、わずらわしく感じられます。
毎度持ち越すたびに、ですから。
信用枠が減る
夜間にPTSで売買をするなら、現物玉しかありません。
現物で売買をすれば、信用枠は減ります。
すなわち、PTSは信用枠を減らす一因となります。
現物でのトレードでは、同じ銘柄で何度も売買することはできません。
差金決済となり、しかも信用枠がない場合には、含み損が増えるままに損切りも出来ず、売り玉も置けず、何も手が打てなくなる場合があります。
トレードをする者にとって、信用枠が減るのはストレスに他なりません。
即金規制への対応
IPOでトレードをする者にとっては、即金規制への対策は必須であります。
IPO初日に買いが多く入り、寄り付かずに引けた場合には、翌営業日に即金規制となります。
この規制が入った銘柄でトレードをするには、手つかずの現金が必要となります。
手つかずとは、直近2営業日においてトレードをしていない、まっさらな現金を意味します。
PTSで売買をしてると、この手つかずの現金が減ることになります。
すなわち、PTSで売買をしたがために、寄らず高値のIPOに触れる機会が減らされてしまうことがあるのであります。
このため、IPO直前の日のPTS売買には注意が必要です。
PTSの機会損失
うまく素っ高値、ストップ高張付の銘柄を買うことができることはあります。
投入資金比、+2~3%はいただきや、と。
なぜなら、おっさんたちが担がれているからであります。
浮かれながら夜間のPTSを確認すると、7~8%くらい上がっています。
当方、5%以上上がれば、たいていの場合、決済する習慣です。
即刻売ろうとしたのですが、信用玉で持ち越していたため、売れない。
夜間の現引は翌朝まで約定しないと言う、このパターン。
PTSに危険な誘惑の香り、と言う訳です。
誘惑ついでに、当方がPTSでのデイトレに手を出した時のことも、追記しておきましょう。
PTSで味をしめ
PTSのデイトレは、当方、見向きもしておりませんでした。
なぜなら、信用取引ができないから。
夜の時間帯においては、現物のみの売買。
これがPTS市場です。
そして某日、PTSにて試し買い、放置した銘柄にて利益確定。
小ロットにも関わらず、大きな値幅が取れました。
PTSデイの開眼であります。
いわゆる夜場、PTS市場にて、40%も値上がりすると言うトンデモ銘柄に遭遇。
あれよあれよの爆上げで、買値から上、2~3割は取れたな。
世に言う、儲かった病であります。
現物のみしか扱えない、やればやるほど翌日の信用余力が減ってしまう、そんなPTS市場に興味を持てなかった当方。
しかし、なぜここまで素っ飛んで値上りするのか。
その答えは、板がないからであります。
誰も見向きをしないとまでは言いませんが、参加者が少ないので、売り板が出ていない。
だから上がる時はグングン上がる、と言う訳であります。
何これ安いPTS
何これ安い、買っとくか。
で、しばらく後、再びモニターを見てみると。
相場において、二度見をすると言うのも久しぶりのことでした。
含み益7万。
100株だけで。
あわてて利益確定しようとしましたが、うまく発注できません。
発注画面に慣れていなかったのです。
何とか無理矢理売り抜けて、一息ついたのもつかの間。
これイケるんでないか、PTSデイ。
位置がわからない
一夜明け、再び夜場。
当方、にわかにPTS市場を徘徊し始めました。
相場の病に取りつかれ、2匹目のドジョウをあさり始めたのであります。
某証券では、PTSの手数料がかかりません。
夜場においては現物のみの売買、すると、信用金利もかからない。
経費ゼロで買うことができます。
そして、何これ安いで買う。
するとどうでしょう。
ああ、なんと恐ろしい。
慣れない手法にはトゲがあります。
PTSの板では、パッと見て、今いる位置がわかりません。
チャートを見るにも、昼間に比べ、ひと手間がいります。
すなわち、イメージがつかみにくいのであります。
あれ?上がらないなあ、損切りするか、と思ったそのせつな。
やってもうた
板が薄いPTS市場。
ストップ安に張り付くのもあっと言う間であります。
なんやコレ張り付いとるやないかと思いつつ、それほどの売り数量が積もっている訳ではありません。
まあ逃げられるやろ。
そんな希望的観測が悪かった。
以降、その夜、その銘柄はずっとS安に張り付いたまま。
緊迫感なし。
PTSにおいては出来高、板ともに薄い。
このため、トレードに伴う切迫感、焦燥感がいささか不足します。
一種の平和ボケです。
底堅い悪魔
一夜明け、恐るおそるザラバを見渡すと。
これは、どこをどう見ても、とっつかまりました。
底堅い非情な悪魔に。
積もり積もった相場のしかばねに。
強力な圧をもってガンジガラメにされているのであります。
ストップ安連続の煽りを食い、明日は値幅制限の拡大措置だそうな。
オワタ。
これがPTSによるPTSDのお話であります。
さて、本日の結果は、かなり悩んだ末、ノートレ・ノーポジ継続。
IPOが上がり、雰囲気としては悪くありません。
今月の収支はプラス。
月初3営業日で大きく利益が出て、大幅プラスと思いきや、すぐに大半を削ってしまいました。
やらなきゃ良かったのです。
せめて8月相場でガツンと行きたいと思います。